株式売買常勝の秘訣

3.なぜチャートの分析だけでうまくいくのか

柴田秋豊氏が相場を分析する上で、唯一不変的なものとして信頼をおいたのがチャートである。
どうして、チャートだけを分析し、投資することによって利益を上げ続けることができるのであろうか。

例としてトヨタ自動車(東証一部 7203)をとりあげてみよう。トヨタ自動車は、日本を代表する企業の一つだ。ニュースは毎日どこかしらで目にするといってよいだろう。

特に2000年以降は、その実力は国内にとどまらず、世界的にみても抜きんでてきたようだ。当然、毎日発信されるニュースに悪い情報はほとんどなく、好材料の情報だけがつみ重ねられてきた。

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では、この間の株価はどうであろうか。図3のトヨタ自動車の月足チャートをみていただきたい。トヨタ自動車の株価がピークをつけたのは2000年4月の高値5800円で、その後は右肩下がりである。

もう少し詳しくみてみよう。図の中に記述してあるとおり、主なニュースだけでも、その内容は株を買いたくなるような内容ばかりだ。この間、多くの情報紙ではトヨタ自動車の4000円割れは絶好の買い場であるとか、推薦銘柄にはトヨタ自動車が常に入っていたのである。

その根拠は、トヨタ自動車という会社が他社と比較して、すばらしい業績を残しているということや、すばらしい経営をおこなっているというデータからであろう。しかし、この間の株価は下がり続けたのである。

下落した翌日の新聞の株式欄をみると、円高が原因であるなどさまざまなことが書かれていたが、2002年に入るとその理由として、厚生年金基金の代行部分を返金するための売り圧力が、株価下落の原因であるらしいとの記事が目につくようになった。下落してはじめて、それらしいニュースが出てくるのである。

柴田罫線理論で分析すれば、この銘柄に買い投資をする魅力は、この間ほとんど感じられない。実際に柴田罫線理論セミナーの中では、下落途中であるトヨタ自動車は買うべきではないと言い続けてきたのである。

何故そのようなことが言えるのか――。どのような根拠からなのか――。

柴田秋豊氏がいう、唯一信頼できる株価とは、どのようにして決まるのかを考えてみよう。

多くの投資家はあらゆる情報、あらゆる理由を加味して売買しているのである。トヨタ自動車がどの程度利益が増えそうだということは、ニュースになる前から調べればわかることである。円高もそうだ。朝から晩まで、一瞬をあらそって市場で利益を上げようとしているプロの投資家は、わずかに円高に振れただけで売買に反映するのだ。個人投資家が、新聞に出ているようなニュースをみてから投資しても、すでにその内容は織り込まれているといって間違いないだろう。

さらにいえば、それら一つ一つのニュース、情報がどの程度の買いの力になり、逆にどの程度の売りの力になるというのだろう。もし、ファンダメンタルズ分析で投資をしていますという個人投資家がいるのならば、どれ程、その会社を分析しているのかを問いてみたい。既に文書になっているような情報で売買するということは、既に市場がその情報を織り込んでいる株価から、さらにどちらへ動くかを判断することなのである。いってみればそれは個人の勘だけによる売買なのである。

では、その取り引きされた株価というものはいったい何であろうか。株価は、その一瞬に買いたい人の力と売りたい人の力が真剣にぶつかって、取り引きされた価格である。そして、その株価の変動というものは、買いの力が大きければ上昇し、売りの力が大きければ下落するのである。

株価は、我々が目にしている情報(トヨタ自動車の利益が増加した)、我々がほとんど無視してきた情報(年金の代行返金で売却)、そして我々が知らない情報、それら全ての情報や背景を市場に参加している全ての人間を通して、決まるものである。

株価には、世の中のありとあらゆる事象、「世の森羅万象」が反映されていると柴田秋豊氏は言っている。出来高が高水準だからとか、移動平均線にゴールデンクロスが現われたとか、そのようなことは市場に参加しているほとんどの人が知っていることである。知った上でなお買ってくるのである。知っているということは、株価に織り込まれているのである。

株価を決めるのは人間だ。あらゆる情報をインプットした人間(市場で取り引きしている大多数のプロ)が売りか買いかを決めるのである。

極端な例をあげよう。

あなたが今日、トヨタ自動車の株を一万株買おうと思っていたが、証券会社に行く途中に交通事故にあって、買い注文を出せなかったとしよう。それはその日のトヨタ自動車の買い圧力が一万株分少なくなっているのである。

つまり、あなたの交通事故は、その日の株価に反映されているのである。これが取り引きの少ない株式ならば、ストップ高であったものが、逆にマイナスで引けることもあるのだ。株価には「世の森羅万象」が織り込まれているのである。

人間が売買する以上、一人一人の人間がどのような理由で売買したのかなど、知ることはできない。結果的にジリジリ上昇していく株価(ニュースになる前に事前にサーチした投資家が買いを入れている状況)から、その後の暴騰(ニュースになり、だれもが飛びついた状況)が起こる前にその動きについていくのである。

我々は、この一瞬に至るまでの株価の動きを見る必要があるのだ。実際に株価が上がり続けているという現実、下がり続けているという現実を知ることが投資で勝つ秘訣であり、なんで上がったのだろうと、一生懸命その理由を探す必要はないのである。

なぜなら、その理由を探し出しても、それが正しいかどうかさえ確認することはできず(もしかしたら永遠に…)そうでないかという理由がみつかっても、すでにその情報に新鮮味はなく、株式投資の利益に結びつくことはないのだから。

前章のUFJホールディングスにしても同様だ。

我々は、売りの力と買いの力が逆転したその瞬間をとらえ、より有効と考えられるところでその流れに乗るのである。
さまざまなニュースをみたり、うわさ話を聞いたりすることによって、我々の投資マインドはどうしても影響を受ける。せっかくチャート上では、強い買いサインを出現させていながら、雑誌のランク付けが下位にあることによって、その投資をやめてしまうこともよくあるのだ。

柴田秋豊氏はこう言っている。

「銘柄が何であろうと、世の中がどうであろうと、それら材料(ファンダメンタルズ)を罫線(チャート)に加味してはならない。これを加味することは罫線(チャート)を冒とくするものであり、その観測に誤りを生ずる」

ファンダメンタルズを一切排除する。これが柴田罫線理論の考え方の原点だ。
わかりやすく言えば、全てのファンダメンタルズは、実際に売買している投資家を通してチャートに反映されるのであるから、その事実(取り引きされた結果)のみを見なさいということなのである。